第5章 心の駆け引き
談笑の最中、嫌でも聞こえてしまうワード。一之瀬はさり気なく花織の方を見る。花織は驚き、少し口籠ったようだ。少し頬が赤くなるのが一之瀬からもよくわかる。そういう顔は結構男受けがいいだろうな、と一之瀬は食事を口に運びながら風丸らの方を振り返った。……なるほど、いい顔はしてないな。
「え、えっと……。足が速くて真面目で、一生懸命で。……凄く仲間思いの優しい人かな」
照れた様子で花織が言う。一之瀬も土門も無表情だったが、抱いた感情は同じであった。花織が言っているのは好きなタイプじゃなくて好きな人の特徴だろう。吹雪もそれに気が付いたようだ、ふっと表情を陰らせる。
「ふうん。何だかそれって誰かのことを言ってるみたいだね」
「うん……。そうかもしれない」
少しだけ切なさを覗かせて花織が言う。彼らは思った、吹雪が望んでいるのは否定の言葉だろうにと。花織は素直だが意外と鈍いのかもしれない。今までは割と鋭い方だと思っていたが。
今度は花織の想い人の方へと視線を送る。あまり機嫌は良くなさそうな気がする。というか、気づいているのだろうか。花織が言っている人物が自分であることに。……もしかして気が付いていないんじゃないか?
一之瀬はもぐもぐと食事を進めながら肩を竦める。彼ら、本当は鈍いのかもしれない、と。