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嫉恋

第5章 心の駆け引き




「ありがとうございます。吹雪さん」
「いいんだよ。君には優しくして貰ってるからね。……花織さん」

吹雪は柔らかく微笑を浮かべながら花織の名前を呼んだ。花織は彼の手から自らの手を離しながら首を傾げた。じっと彼の顔を見つめる。試合の時に見せるあの一面はやはりサッカーの時だけにしか出現しないのだろうか……、そんなことを考えていた。

「よかったら僕が滑り方を教えるよ」
「え?」
「君も風になりたいんだよね。……僕が君を風にしてあげる、だから一緒に練習しようよ。その方が僕も楽しいし」

良い提案なのだろう。花織は吹雪の顔を見ながらそう思った。彼の言う、風になるという言葉は花織自身も気になっていることだ。誰よりも速くあることは諦めた彼女だが、それでも速さに興味が無いわけではない。それに今、全く練習が上手くいかなくて四苦八苦しているのだ。彼の手を借りない手はないだろう。

「はい、じゃあ……。お言葉に甘えて」

吹雪の誘いを受けようとする花織。そんな彼女にはいくつかの視線が向けられていた。ことに一際不服そうに視線を向けているのはもちろん、風丸である。

彼は今、本当に気分が悪かった。練習が上手くいかず視野が全く開けないことも、花織と吹雪が仲良さげに話をしていることも、自分のスピードが吹雪に劣ることもすべて気に入らない。だが自分に何を言える義理もないから黙っているしかない。そんな自分にも心底腹が立つ。
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