• テキストサイズ

嫉恋

第5章 心の駆け引き



***

さて、タイムリミットが45分を切った頃、ようやく花織はゲレンデを滑り降り始めていたのだが……。彼女が思っていた通り、中々上手く滑ることができなかった。まずバランスを取ることが難しく、立つのがやっとなレベルである。斜面などはとてもじゃないが滑れるような気がしない。数センチずつ、じりじりと降りていくのが精いっぱいだ。

「わっ!!きゃっ!!」

何事もチャレンジと、思いきってボードの向きを変えようと重心を偏らせるとすぐにバランスを崩して転んでしまう。キャプテンと並ぶほど転んでいるのだから、結構バランス感覚は無い方なのかもしれない。

「冷た……」

顔を顰めつつ花織が呟く。そろそろ転び過ぎでジャージが濡れ、臀部がひんやりとしてきた。息をついて花織は振り返り、ゲレンデを滑り降りる選手たちを見つめた。鬼道、塔子は普通に上手い。塔子は特に初めてスノーボードをするとは思えない滑りっぷりだ。

土門や一之瀬も慣れた滑りを見せ始めている。……彼は花織と同じようにこの特訓があまり上手くいっていないようで、滑るたびに足をがくがくとさせている。だが誰より熱心にこの特訓に取り組んでいる様に花織には見えた。

「大丈夫かい?」

ふんわりとした穏やかな声が、花織の顔を覗きこんだ。花織は驚いて目を見開く。吹雪だ、彼は花織の顔を覗きこみああ、と声を漏らした。そしてふっと頬を緩ませる。

「君だったんだ。こんなところに座り込んでちゃ、危ないよ」

その言葉と同時にすっと吹雪の手が花織に差し出された。どうやら立つのを手助けしてくれるようだ。花織は迷いなく彼の手を取り、立ち上がる。自分で立ち上がることも花織の苦手分野であった。
/ 433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp