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嫉恋

第5章 心の駆け引き




花織は円堂の返事に嬉しそうに笑うと余っている靴とボードを準備し、秋と春奈、そして夏未の元へと向かった。そして彼女らの前に立ち、頭を下げる。

「ごめんね、一時間だけ参加してくる。ちゃんとこの埋め合わせはするから」
「いいよ。花織ちゃん、練習も参加するよう監督に言われてるんだもんね」
「そうですよ!こっちは特に仕事もありませんし、気にしないでください」

花織が極力練習に参加する、という話はもちろん監督から他のマネージャーたちにも通っている。彼女たちは快く花織が練習に参加することを許してくれた。彼女から許可を得た花織は広い平坦な場所へ来るといそいそと道具の装着を始める。急がなければ時間が惜しい。

「花織、お前はスノーボードは経験があるのか?」

着々と準備を進める花織に鬼道が声を掛けた。彼は準備万端のようである。花織は彼を見上げ、笑い掛けるといいえと返答した。

「スキーはしたことあるんですけれど、スノーボードは全く。だから今日はかなり転ぶと思いますよ。鬼道さんは?」
「多少はある。だが、教えてやれるほどの経験者じゃないな」

微苦笑を漏らしながら鬼道が花織に言う。花織は肩を竦めた。

「それは残念です。鬼道さんに教えて頂こうと思ってたので」
「の割に楽しそうだな、お前は」
「もちろんです。皆と同じ練習ができるのに楽しくないわけがないじゃないですか。……よし、行きましょう?鬼道さん」

心底楽しげに花織が鬼道の手を引きかねない声色で言う。鬼道は花織の様子を見て微笑ましさを感じていた。花織は以前、フィールドに居なければ選手の世界は見えないと切なげに呟いていた。きっと今はキャラバンに乗り、自分も多少なりと戦力になれるこの状況が嬉しいのであろう。

鬼道としては彼女が怪我をするリスクが上がる様な事は謹んで欲しいのだが、花織と同じフィールドを駆けることに関しては楽しさを見出していた。

彼は今もどんな花織も愛しているが、中でも彼女が風を纏う姿には特別なものがあった。何せ、鬼道は彼女のその姿に心を奪われたのだから。
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