第1章 脅威の侵略者
ただ……、彼は悲しそうな花織を放って置くことができなかった。彼女の背後では仲間は絶望し、秋や夏未が忙しく現在の状況を得るために電話をしている。そんな状況が自分にとってどこか遠くにあるかのように風丸は今、花織しか見ていなかった。きっともう数秒もすれば、先に鬼道が花織に声を掛けていただろう。それが何となく、というか堪らなく嫌だったのだ。
「え、っと……」
言葉を見失って風丸は焦った。付き合っていた頃、彼女に片思いをしていた頃は何も考えずとも口を付いて出ていた彼女を心配する言葉が、中々出てこなかった。
「その……、大丈夫か?辛そう、だから」
風丸はそう言って何を言ってるんだ、と自分を諌め口を噤む。今辛そうな顔をしているのは他の皆だって同じだ。自分自身だって部室や学校を破壊され、宇宙人に対する怒りや力の次元の違いを震えるほど感じている。花織だけが辛いわけじゃないのにこんな言葉を掛けてしまうのは、きっと風丸もこの事態に動揺しているからだろう。
「私は大丈夫。……でも、なんだかやるせなくて。この部室は40年間もサッカー部を見守ってきた、ずっと。それなのに……、フットボールフロンティアで優勝したその日に壊れてしまうなんて」
花織は部室から目を逸らさずに自分の気持ちを吐露した。静かにはっきりと、だが風丸にはその声は一言も漏れずに届く。
「全国優勝のトロフィー、飾ってあげたかった」