第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎
「師範と一緒に見れて良かった」
「む?」 「え?」
まずい!心の声、そのまま漏れた??
「今、なんと言った?」
「うーん……何か私言いましたか?」
しまった。どうやってごまかそう。どうしよう、どうしよう。混乱してるから、それしか考えられない。
「聞き間違いでなければ、俺と一緒にみれて良かったと、そう聞こえたが?」
はあ、と大きくため息が出た。全部聞かれていたからだ。
師範は「ん?」と腕組みをしながら私を見ている。
それは物凄く優しい顔。
ちょっとこれは……勘違いしてしまいそうだな。
でも ——
もしかして、伝えるなら今なのかな。んん、でもどうしよう……なかなか気持ちに踏ん切りがつかない。
その時だった。
『思う方がいるのなら、結果がどうあれ、伝えた方が良いのではないですか』
『恋仲になった!』
しのぶさんと炭治郎が先日言っていた言葉が急に頭を巡る。
ああ!もう!ここは当たって………
「師範!」(砕けろ!)
私は彼をまっすぐ見上げた。いきなり大きな声を出したからか、何事だ?と訝しむ表情を私に向けている。
緊張する……そんな中、ゆっくりと深呼吸を一回する。
「私、師範の事が好きです」
師範の大きな目が更に見開かれた。
「…大好きです!」
とうとう言ってしまった ———
「すみません、急に。こんな綺麗な夜空の下にいると、気持ちがその……高まってしまって……」
恥ずかしい!もう家の中に入ろう!
そう思い、くるりと踵を返そうとした時にパシッと腕を掴まれる。
「………」
「師範?どうしたんですか??」
たまにどこを見ているかわからない双眸が、今は私の目をしっかりと捉えている。心臓が途端に暴れ出すように鼓動を速めた。
「あの!聞き流して頂いてかまいませんから。私戻りますね……」
そうして掴まれている腕から逃れようとした瞬間、私の体はふわっと彼の腕の中に引き寄せられた。
「……そう言う事はこちらから伝えるものじゃないのか」
「こちらからって……んぅ」
最後まで言い終わらない内に顔を上げれば、師範の唇が私の唇を優しくさらう。ちう……と一度だけだった。
でも、とても気持ちが伝わってくる口付けだった。