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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎



恋人の短く、さらっとした髪に優しく手を通す。指通りがとても良い。

「君は本当にかわいいな」
「ありがとうございます。好きな人からの”かわいい”は物凄く嬉しいですよ」

好きな人、か。その響きが素直に嬉しかった。これから何度でも俺は君に”かわいい”と伝えるのだろう。

「しかしな、七瀬」
「……どうしました?」

「今こうして俺の腕の中にいる君は……凄く綺麗だ」
「えっ、泣いても良いですか」

「ははは!泣くのか」
「だって…」

「どうした?」
「はい。好きな人から言って貰う綺麗は本当にそうなるんだよって……先輩隊士から聞いたんです」

「ほう、それは楽しみだな!」

………もう十二分に君は綺麗だがな。
ほんのりと色づいた彼女の柔らかな両頬をそっと包み、額をコツンと重ね合わせた。

かわいい君はたまらなく愛おしい。綺麗な君はとびきり麗しい。
そんな七瀬の姿を見る事が出来るのは、自分だけでありたい。


「続けるぞ」

額を離す前に一つ小さな愛撫をそこに落とし、この日何度目になるかわからない口付けを彼女の唇に贈る。そして再び、恋人との情事に深く深く身を沈めて行った。



流れ星に三回願い事を唱えると叶う—— 七瀬がそう教えてくれた。この日のしし座流星群は極大と言って、数多く星が流れる中でも最も多く星が流れる夜だったと言う。


自分達は鬼を滅する隊士だ。伊黒が先日言っていたように、明日も生きている確証はどこにもない。だから”今”を大事に生きるしかない。それでも俺は願わずにいられない。

七瀬と過ごす日々が、ずっとずっと続くように。
愛おしい君との軌跡が、この先もずっとずっと辿れるように。

それから……来年の流星群も共に観れるように。次回は千寿郎に声をかけてみるのも良いな。

新しい夜明けがやって来るまで、俺は外で絶え間なく流れる流星に願いをかけ続けた。


「杏寿郎さん、大好き」
これからも君にそう言ってもらえますように。


「七瀬が大好きだ」
これからも君にそう言えますように。




婚星(よばいぼし)、欲張りですまない。俺の願いを ——— どうか叶えてくれ。














杏寿郎目線 〜終わり〜

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