第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎
「あ、ん……」
「はあ、やっと1つになれたな。動くぞ」
「んっ……は、い」
パン、パン、と互いの結合部が当たる音が部屋に響く。布団も動く度に擦れる音がする。
恋人と体同士を触れ合わす。それだけの事なのに、体の奥底から湧き上がる欲は果てしない。
七瀬とこのまま繋がっていたい。愛しい君をずっとずっと抱いていたい。
「大好きです、杏寿郎さん」
俺に届いた、彼女からの言葉。君からの”大好き”はとても優しく、ほっとする響きだ。
「俺も君が好きだ……七瀬が大好きだ」
更に速さが増す律動。腹の中心が燃え上がるように熱い。
「一緒に……きょう、じゅ、さ……」
「はあ、はっ……くっ………」
恋人が俺の首を更に抱き込んだ。
息をついたと同時に勢いよく、男根を抜くと、七瀬の腹部にジワ……と己の白い欲を大量に吐き出した。
「たくさん、出ましたね……」
彼女がやや驚いた様子で俺に言ってくる。それはそうだ。何故なら………
「君の中はとても気持ちよかったからな」
そして七瀬の両頬を包み、口付けを一粒。
恋人の膣内に入った瞬間から押し寄せた快感と、今の今まで向き合っていた。名残惜しさも感じてはいる。
しかし、ひとまず彼女の腹部に付着している己の白濁を、近くに置いてあったちり紙で綺麗に拭き取った。
呼吸をお互い整えた後は、彼女を自分の太腿に向き合うように乗せて華奢な腰に両手を回す。
「まだ硬いような気がします……」
「ああ、そうだな」
「………」
「………」
二人の間に生まれる沈黙が心地良かった。
「あの……」
「ん?どうした?」
焦茶色の双眸が優しい眼差しで自分を見下ろしてくれる。
「私…杏寿郎さんと恋仲になれて、改めて良かったなあって思います」
「嬉しいな。それは俺も同じだ」
真っ直ぐな言葉で伝えてくれる君。そんな彼女にありったけの思いを込めてまた口付けを贈る。
「七瀬」
「ん、」
「君との口付けも癖になりそうだ」
最後にちう……と吸い上げて、俺は唇を離す。
「だから、何度でもしたい」
君も同じ気持ちでいてくれると良いのだが、どうなのだろう。