第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎
「あ、ん。きもち、い……」
満足しながら、俺は下へ下へと唇をおろして行った。片方の尖りは指で触れたままにして。
「困ったな。どれもこれも俺好みだ……もっと君を知りたい」
そして、七瀬の心と体に踏み込みたい。
彼女が着ていた寝間着と羽織をゆっくり取り払い、纏っていた下着もスッと外す。
「や、ダメ……」
文字通り一糸纏わぬ姿にすると、彼女は俺の隊服に右掌を当てた。
「どうした?」
「その……私だけだと恥ずかしいので、杏寿郎さんも脱いでもらえませんか」
「……!」
俺は一瞬だけ目を大きく見開く。
よもや彼女からそんな事を言われるとは……しかしこれは確かにそうだ。
自分が何も身につけていないのに、相手がしっかりと衣服を着用していたらそのように考えるのも無理はない。
己で納得した次の瞬間には妙案を思いつき、彼女にこんな提案をした。
「では七瀬、君が脱がせてくれ」
「え?私がですか……」
「そうだ」
『煉獄、もし相手が脱いでほしいつったら頼んでみろ。じゃあ脱がせてくれってな。好きな女にされるのは極上だぜ』
宇髄に実践編の講義を受けていた時、嬉々としてそう言われた事を思い出した。そして隊服に当てている彼女の手をそっと掴み、第一ボタンの位置に導く。
「………早く」
やはり、自分はせっかちだなと思ってしまう。
戸惑いながらも「はい」と頷いた七瀬は少しだけ震えている手で、金のボタンを順番に外す。
それが終わると、下に着ている衣服のボタンも全て外してくれた。
宇髄の言う事はもっともだった。
照れながらも懸命にやってくれる彼女に愛おしさが増したからだ。
「……外しましたよ」
「ありがとう」
俺は羽織と共に襯衣(しんい=シャツ)も脱いだ。
「………」
すると、無言になる彼女だ。ん?どうしたんだ?