第12章 婚星(よばいぼし)、君を抱きしめる ✳︎✳︎
七瀬は目を逸らす事なく、こちらを見つめてくれた。
「はっきり言ってくれないとわかりませんよ……女の人は言葉に出してもらってようやく“好き”を確信するんですから」
「そうか」
それでは自分がやる事は1つだ。
「俺は七瀬が大好きだ」
彼女の耳の下にそっと手を差し込んだ後、再び自分の唇で熱い思いを伝える。先程と違い、今度は強めの口付けを贈った。
「ん……」
再度甘い吐息をこぼす彼女。俺はトントンと舌で唇を開けるように促す。せっかちだな…こう言う所でも性分が出てしまった。
七瀬が口を開けるとすぐに自分の舌を口内に侵入させ、歯列を丁寧になぞっていく。
気持ち良さそうにしている様子が伝わって来た。そのまま口内のいたる所を味わい、更に堪能する。
彼女の唇からゆっくりと自分の唇を離して行くと、お互いの絡まっていた銀の糸が姿を現す。それは綺麗に繋がった橋のようだった。
ゆっくりと七瀬が視線を上に向けてくる様子を真っ直ぐと見つめる。すると焦茶色の瞳に映っている自分が、思った以上に真剣で少し笑ってしまう。
「これでウソではないとわかったか?」
「はい……」
流星の下で見る七瀬は照れている表情がとても愛らしく、胸をぎゅっ…と掴まれた。
「君も俺と同じ気持ちと言うのであれば、一緒に来てくれ」
「は、はい」
やや戸惑い気味の彼女の肩をふわっと掴む。
しかしはっきりとした拒絶ではない。それに安心した俺は玄関に向かった。
カラカラ……と戸を開けて一旦七瀬から離れると、脱刀(だっとう)して草履を脱ぐ。
彼女が草履を脱ぐのを確認し、再び肩を柔らかく掴んだ俺が向かった先は ——— 自分の部屋だ。