• テキストサイズ

沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第46章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎



やはり千寿郎は強い人だ。
七瀬は彼が持って来た麦茶を最後まで飲み干し、ぼんに置く。あの後雑談を交えて話をしていたが、十分程経つと千寿郎くん小さくあくびをした。今はまた一人で縁側に座っている。

もうすぐ日付が変わる。
いよいよだ。後もう一回だけ素振りをやったら寝よう。彼女が草履を履いて縁側に降りた時、再び後ろから声をかかった。


「帰宅して廊下を歩いていたら、千寿郎と会ってな。君が庭にいると教えてもらったんだ」

「毎回思うんですけど、杏寿郎さんは本当に頃合いが良いんです。いつも絶妙」

「そうか!」

声をかけたのは彼女待ち望んでいた人物であった。
素振りをして汗をかいたので、杏寿郎と湯浴みをし、彼の部屋にやって来た。そして布団の中で話をしている。

「杏寿郎さんは言わずもがなですけど、千寿郎くんも本当に心が強いですよね。凄く良いなあと思います。私はしょっちゅう落ち込むし、すぐ羨んでしまうので…」

「以前、言っただろう?君は君だ。俺は自分の弱さを認める事が出来るのも強さだと思うぞ」

「認める…ですか?」

ああ、と頷いた彼は七瀬の左頬を撫で、額に口づけをくれた。

「弱さを認めるのは辛い事かもしれない。けれど今の自分に何が必要か。今の自分に何が足りないか。それらを見つめ直す事が出来る。七瀬はそうやって、新しい型や既存の型の改を編み出して来たのではないか。俺はそう思っている」

「杏寿郎さん……ありがとうございます。私、本当に頑張ります…」

ぎゅっと目の前の彼を抱きしめた七瀬は胸に顔を埋め、いつものように彼の心臓に左耳を当てる。
今日も変わらず、規則正しく、一定の鼓動が波打っているそこと自分の呼吸を合わせていくと、気持ちがスウッと落ち着いて眠気に誘われた。

「すみませ……眠くなって……」

「もう休め。俺も寝る」

「はい……おやすみ…なさい…」

“おやすみ、七瀬”と彼が言ったとほぼ同時に瞼を閉じた。
きっと上手くいく。大丈夫。脳内に前向きな表象(イメージ)を抱きながら、彼女は恋人の腕の中で寝付いたのであった。


——— 将門塚の再建はもう今日である。

/ 568ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp