第46章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
「ありがとう……ございます………嬉し……」
七瀬は、両目から滴り落ちる涙で上手く話せない。
「すまん、泣かせるわけでは……」
「わかって…ます…ヒック……これは…ヒック……嬉し…涙……ヒック……グスッ……すみません…一度鼻を……噛みますね」
彼女は居間に置いてあるちり紙で数回鼻を噛んだ。
「申し訳ありません。落ち着きました……」
「本当にすまない…」
互い残っていた麦茶を飲み干し、ふう……とひと息つく。
「俺は君を泣かせてしまう事がどうも多い気がするのだが」
「ふふ、大丈夫ですよ。嬉しい涙は何回だって流して良い物ですからね」
「ありがとう。そう言って貰えると助かる」
槇寿郎にようやく笑顔が宿る。
「七瀬さん、将門塚の再建についても君に伝える事がある」
「えっ……どんな事なのでしょうか?」
「前回…百年前は俺の祖父が役目を請け負ったんだ。君と同じように左手の甲に蠍の焼き印を最初につけられてしまってな」
「槇寿郎さんのおじいさまですか……もしかして、おじいさまも炎柱を?」
そうだ……と一度頷くと、槇寿郎はこんな言葉を伝える。
「始まりは十二の炎で、終わりは十二の水…ですか?」
七瀬は思わず顎に手を当て、天井に目線を向けた。
「ああ、当日は石室の周りに松明が円形状に十二個程置かれるそうだが、その松明を使用する際に必要な事らしい。俺の子供が次の代になるかもしれないと言う事で、幼い頃からよく聞かされていたんだ」
「何でしょう…炎と水?……この場合考えられる事として真っ先に思い浮かぶのは呼吸ですけど。炎の呼吸は全部で九個ですし、水の呼吸は全部で十個。どちらも足りませんよね……」
うーん、と唸りながら槇寿郎は腕を組んで目を瞑る。一体どういう事なのだろうか。
十二個、十二個…脳内で数回繰り返した後、七瀬はあっ……と思い付き、槇寿郎にこう伝える。
「すみません、槇寿郎さん。少し見て頂きたい物があるのでお庭に来て頂けますか?」
さて、彼女が閃いた事とは——