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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第46章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎



時刻は午後三時。
千寿郎はあれから素振りを十五分程やった後、槇寿郎と話をしてくると七瀬に告げ、行ってしまった。

だから今はここにいるのは彼女だけだ。
空をふと見上げる。八月下旬になると、夏特有の真っ青な空の色は少しずつ見せる表情を変えていき、庭に生えている木からはツクツクボウシの鳴き声が際立って聞こえ始める。

”もうすぐ夏が終わるよ”そんな季節の変わり目を教えてくれる蝉だ。


『君は必ずやり遂げる。そう信じているから怖さはあまりないな』

『俺も信じています。七瀬さんは必ずやり遂げると』


杏寿郎、そして千寿郎が七瀬に言った言葉が頭の中で続けて反芻される。
左手の甲に目線を向ける。今は何もない手だけど、後三時間経つとまた今日も焼き印が浮かび上がるのだろう。

「はっ—— !」

七瀬は千寿郎がやっていたように素振りを始めた。上段から、中段から振り下ろし、下段からは右斜め上、左斜め上…と振り上げる。雑念を振り払いたい—そんな思いから木刀を手にし、自分自身と向き合っている。

「炎の呼吸——」

スウ…と息を全集中の呼吸に切り替えた。
「不知火」 「昇り炎天」 「気炎万象」 「盛炎のうねり」
壱ノ型から肆ノ型まで木刀で型の軌道を確認する。

横一閃、下段から上段、上段から下段、渦を描く——横から下から上から、彼女の周りに次々と炎が舞い上がっては消えて行く。

「炎虎」 「心炎突輪」 「紅蓮業火」 「烈火の舞雲」

続けて伍ノ型から捌ノ型までの軌道を木刀でなぞっていく。
右斜め後ろから振り下ろす、茶道の所作を入れた突き、反時計回りに弧を描く、右肩の上に木刀を構える。

最後はもちろんこの型。頭の右脇で木刀を構え、闘気を高める。
そして七瀬は右足でトン、と地を蹴った。

「奥義 —— 煉獄」

大きな紅蓮の龍がグワッと一瞬だけ目の前に姿を現した後、それは空気に混ざって消えた。

「ふう」

七瀬は木刀を下ろし、いつも立てかけてある場所へしまいに行く。頭がスッキリしたようだ。
これはいいかもしれない。

全てのを繋げて素振りをする。記録帳に書いておこうと決めた彼女はこの日の夜、カナヲと任務へ向かった。

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