第46章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
「無一郎くんと勝負した日にね、杏寿郎さんにどんな柱になりたいかって聞かれたの。考えた事ないって私が伝えたから、そんな風に言ったのかもね」
「そうでしたか……」
「うん」
七瀬は湯呑みに入っていた麦茶をゴク、ゴク…と全て飲み干し、盆へと置くと、彼女も話を切り出す。
「杏寿郎さんの焼き印の事は聞いた?」
「あ、はい…日中の間だけ、掌に浮かび上がっているとしかお聞きしてないですが。どうかされたのですか?」
七瀬は今朝の緊急柱合会議での事をかいつまんで、千寿郎に話していく。すると二人を包む空気が徐々に重くなっていき、目の前の千寿郎の顔も青ざめていく。
「そう……ですか。そんな強い血鬼術がお二人に……」
「うん。槇寿郎さんにもさっき話をして来た」
「……帰宅した時、杏寿郎さんの前では”私が喰わせたりなんかさせない”って言ったんだけどね」
「はい……」
「杏寿郎さんには絶対に言えないから、ここで言うね。本当は凄く怖いの。もし杏寿郎さんを失ったらどうしよう、自分に出来るのかな……って」
「…………」
「私を信じてるって言ってくれたから、奮起して頑張ろう……その気持ちには変わりないんだけど……とにかく怖くて」
「ごめんね、弱音吐いて。自分の中だけで留めておくのは少ししんどいなあって思ってて……」
「七瀬さん」
「なあに?」
すると、千寿郎が自分の両手で七瀬の左手を包んだ。
右手も左手も掌の皮が厚くなっていて、肉刺(まめ)もたくさん出来ている。
その手は七瀬や杏寿郎と同じ。立派な”剣士”の手だった。
「俺も信じています。七瀬さんは必ずやり遂げると」
「千寿郎くん……」
「だから、大丈夫です!」
にっこりと笑う千寿郎は七瀬の目に、とても頼もしく見えたのである。