第46章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
いつもいつも杏寿郎に守って貰っているのだ。だから今回は自分が。七瀬は顔を彼の方へと向け、決意を彼に伝える。
「杏寿郎さんを必ず守ります……頼りない継子ですけど」
「これほど心強い継子は、またといないと思うぞ」
よしよし…と七瀬の頭を撫でた右手は、そのまま彼女の左手の甲を包むように上から重ねられる。
「これ、よく考えられた血鬼術ですよね。杏寿郎さんは日中に浮かぶ蠍で、私は夜に浮かぶ蠍……。色もお互いの日輪刀の色でしょう?」
「そうだな」
自分だけならどんなに良かった事か。しかしそれは先程杏寿郎が言ったように今更嘆いてもどうにもならない。起こってしまった事は戻せないのだから。
「——炎柱」
「…どうした?」
改まって呼ぶ七瀬だが、杏寿郎は普段通りに返答をした。
「炎の呼吸は魔を斬る呼吸——。私は以前そう言いましたけど、今それをふつふつと実感しています」
「うむ」
「十二鬼月の頸を必ず断ち切り、首塚に献上します。あなたを蠍に喰わせたりなんて私が絶対にさせません」
自分の左手に重なっている杏寿郎の右手に一つ口付けを落とし、それから七瀬は、また彼をぎゅうと抱きしめた。
先程と同じように、杏寿郎の両腕が彼女の背中へと回る。
「七瀬はやはり、須佐之男命(すさのおのみこと)だな」
「八雲の羽織に八雲の鍔ですからね。じゃあ杏寿郎さんがこの場合奇稲田姫(くしなだひめ)ですか? 」
「……かもしれんな!であるなら、見事な男女逆転だ」
「えぇ、それは少し複雑ですね……」