第45章 霞柱・時透無一郎

「(突き技…！ どう対応するのかと思ったら…煉獄さんは咄嗟の判断が速いな…)」

七瀬は水の呼吸で回避しており、そこを無一郎は肆ノ型である移流斬りで仕留めたのだ。
杏寿郎は継子が霞雲の海を受けた時の状況を聞いていた。

「水の呼吸でまず回避をしたんです。参ノ型は防御しながら攻撃も出来るから…。霞で無一郎くんがどこにいるか把握しづらかったのでこう言った方法を選択したんですけど…」

無一郎は七瀬の足元に潜り込むように移動をし、そこで攻撃を受けた。そのように言っていたのを思い出す。

回避の型を使用してもうまくいかなかったのであれば、突き技はどうなのだろうかと。一点に集中して攻撃をする事が出来れば、霞は晴れるのではないか。

「(一か八かの戦法だったが、打開出来て安心だ。七瀬には感謝せねばな)」

刺突技を仕掛けた炎柱は、次の一手を繰り出す。

陸ノ型は次の型である漆ノ型に繋げる事が可能だ。これは七瀬がわらび餅を食べている時に思いついたと言う。

「漆ノ型・紅蓮業火！」

「(…連撃か…！ だったら——)」

弍ノ型・八重霞。無一郎は体を大きく捻りながら、瞬時にいくつもの斬撃を繰り出した。
炎と霞は互いの技がぶつかり合うと相殺され、一瞬の間が生まれる。

「むん！！」

「…！！」

杏寿郎が足を踏み込みながら、横一閃の不知火を放った。
鋭く速い壱ノ型は、無一郎が持つ木刀に強烈な一太刀を浴びせる。

ミシリと嫌な音がするが、霞柱は不知火を受けた反動を利用しながら後方へと一度下がった。

トン、トン、と右足左足を順につけると短く速い呼吸を一つ。

「漆ノ型・朧」

瞬間、無一郎の動きが変化し、杏寿郎の視界から姿を消した。
霞柱は勿論、庭の木々や槇寿郎と千寿郎の姿も全く見えなくなっている。

「(この型は確か最後に出していた型だな！霞が先程よりも多いゆえ、刺突では晴れなさそうだ。では…)」