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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第45章 霞柱・時透無一郎



勝負を見守る千寿郎と槇寿郎もまた、それぞれ口元には笑みが浮かんでいる。
杏寿郎もまた無一郎との勝負を心の底から楽しんでいた。

「(時透はやはり凄いな! この剣の才にそれに甘える事のない揺るぎない努力!)」

「(これが煉獄さんの剣技か…七瀬と同じ呼吸だけど、全然違う。七瀬はしなやか。この人は…)」

剛健と評するに相応しい杏寿郎の一撃が無一郎に襲いかかる。
ギリギリと緊迫感が漂う鍔迫り合い。無一郎が押せば、杏寿郎が押し返す。その逆もしかり。

カンと木刀を弾いて後方に下がったのは無一郎だ。一度立ち止まり、下段から流れるような動きで霞の構えへ。

「陸ノ型・月の霞消(つきのかしょう)」

前方にいる杏寿郎へと向かいながら、上空に跳躍しつつも、広範囲の霞で包み込むように無数の斬撃を繰り出す。
これは先日の勝負で七瀬が苦労させられた型である。

辺り一面に広がる霞は無一郎の姿を完全に消してしまった。

見るのは二度目の杏寿郎。見るのと体感するのでは感覚が全くと言って良いほど違うが、彼はやはり炎柱。

七瀬が四苦八苦した型も杏寿郎が対応すればこの通り。

「陸ノ型・改 —— 心炎突輪・散」

それは困難な状況を打ち破る五つの明るい灯火。鋭く速い刺突は蟲柱のしのぶや水柱の義勇にも決して引けを取らない物だ。

「…!」

カン、と木刀同士が当たる音が聞こえると、周囲を覆っていた霞が段々と晴れていく。見えて来るのは先程と同じように打ち合っている杏寿郎と無一郎である。

「兄上、凄いです! あそこで刺突を選択するなんて…」

「先程の時透くんの型は先日七瀬さんが苦労していたからな…思う所があったのだろう。突き技で回避するとは俺も少し驚いてしまった」

興奮が抑えられない千寿郎に、冷静に観察しながらも嬉しい驚きを隠せない槇寿郎。それぞれが兄に対して、また息子に対してのそれぞれの思いを口にした。

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