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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第45章 霞柱・時透無一郎





「父上、千寿郎! それではよろしくお願いします」

「よろしくお願い致します」

玄関から庭に移動した二人は、すぐ近くに立っている千寿郎と審判を務める槇寿郎に頭を下げた。
ふうと細く長い息をはいた無一郎は先程杏寿郎に言われた事を思い出す。

楽しそうな顔をしている —— 感情をあまり出さないと周囲に思われている自分が、まさかそんな顔をするとは。

「(煉獄さんに言われて嫌な気持ちは全然なかった。嬉しかったのかな、僕)」

先日七瀬と剣を交える前と似たような思いが、今もある。
あの時休憩になった時も実弥に同じ事を言われた。嫌な気持ちは全くなかった。

「二人共、準備はいいか?」

槇寿郎に声をかけられた杏寿郎と無一郎は互いに「はい」と返事ををしながら、首を縦に振る。

—— それでは始め!

炎柱と霞柱の勝負が開演した。




「霞の呼吸・肆ノ型」

杏寿郎の足元に滑りこむように、無一郎は斬撃を繰り出した。
低い位置からの移流斬りだ。スウ…と霞をまといながらの攻撃。炎の柱はこれに対し ——-

「炎の呼吸・弍ノ型」

下段から振り上げるように木刀を動かすと、現れるのは太陽の輪を思わせる昇り炎天である。

無一郎の攻撃を相殺した杏寿郎は、カンと当たった木刀の音を聞くと体の向きを変え、素早く体勢を整えた。

スウと呼吸をつくと後ろ姿の無一郎に向かって技を一つ。

「壱ノ型・不知火」

横一閃の炎は鋭く早い攻撃だが、無一郎もまた体を大きくひねりながら次の一手を繰り出す。

「参ノ型・霞散の飛沫(かさんのしぶき)」

自分が纏う霞を晴らすように大きな円が現れる。回転斬りで杏寿郎の壱ノ型に対応すると、再びカンと木刀同士が合わさった。

カン、カンと小気味良く、乾いた音が庭が響く。
二人の柱は舞を披露するかような流れる所作で、試合を進めていく。

「霞柱様、凄く良い表情をされていますね。先日七瀬さんと勝負された時と同じです」

「そうだな、それは俺も同感だ。楽しいのだろうな」



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