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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第45章 霞柱・時透無一郎



杏寿郎・槇寿郎・千寿郎。

煉獄家の男達全員と以心伝心の塩大福を共に食べた事により、無一郎はこれまで味わってた事がない高揚感をその胸に感じている。

早くに両親や兄の有一郎と死別した無一郎は、鬼殺隊に入って以降 —— いわゆる家族団欒とは無縁の日々だった。

「七瀬はいつもこれを味わっているんですね、良いなあ」

「霞柱様! 宜しければ…いえ、何でもありません…」

無一郎に身内はいない。

今の彼の発言でそれを悟った千寿郎は、気軽に煉獄家に来てほしいと提案しそうになったが、己の立場をわきまえたのだろう。

それ以上の言葉を発するのは中止し、静かに飲み込んでしまった。

自分と歳が近いと杏寿郎から聞いていた煉獄家の次男は、無一郎が七瀬と勝負すると聞いた時から気になる存在であったのだが。

そこへ ——-

「君が良ければなのだが、任務の合間や我が家の近くまで来る際はまた立ち寄ってくれないか? 千がどうやら親しくなりたいらしい」

「えっ! 兄上、どうしてそのような事を!」

まさか杏寿郎がこのような事を発言するとは思わず、目を丸くする千寿郎である。

「申し訳ございません、あの…今の兄が言った事は、俺…僕の自分勝手な思いですから…お気になさらず」

ポポっと頬を赤く染めた千寿郎はいたたまれなくなり、茶を煎れ直してくると立ち上がり、バタバタと客間を退室してしまった。

「…良いんでしょうか。僕で」

「ああ、先程も言ったように君さえ良ければの話だがな!」

「皆さんと塩大福を食べてから、今まで感じた事がないような不思議な気持ちが胸に浮かんでいるんです。これって何ですか?」

ふむ、と顎に手をかけて思案する杏寿郎。脳裏にパッと思い浮かんだのは ——


「楽しいと言う事ではないか? 今の君は先日七瀬と試合をした時と同じ顔をしているぞ」


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