第44章 東の緋色(あけいろ)
これはまた面白い!
「…君の発想力には本当に驚かされてばかりだ」
ありがとうございます、と礼を言いながら、彼女が俺を抱きしめてくれた。七瀬の背中に両腕をゆっくりと回す。
「明けの明星は”明け星”とも言われます。夜明け前に見える一番明るい星です。夜は鬼が一晩中活動しますが、この星が見えたら朝が近い…だから辛い状況だとしても、あと少しだけ頑張れる目印になるんじゃないかと。私はそんな風に思うんです」
「あっ……」
「どうした?」
そうだ、どうして気づかなかったんだろう。
「緋色は緋色(あけいろ)とも読みますよね。杏寿郎さんの瞳と刀身は緋色。あなたを象徴する色です。明け星は緋星(あけぼし)とも言えるじゃないでしょうか」
「うむ、確かに緋色は”あけ色”とも読むと聞いた事がある」
「だから明け星……明けの明星も杏寿郎さんに例えられませんか?少し言葉遊びみたいですけど」
「解釈は人それぞれだ。良いのではないか?俺は君の見解がとても好きだ」
「ありがとうございます」