第44章 東の緋色(あけいろ)
その理由は、太陽・金星・地球の位置関係だ。
地球から見た金星は太陽のすぐそばにある為、太陽が沈む時間に金星も沈んでしまう。故に夜中に金星を見る事は難しい。昼間は太陽の光が強すぎるので、俺達人間の目で金星を見る事は難しいと言われている。
七瀬の説明を全て聞いた後、合点がいった。
「なるほど、明け方に見えるから明けの明星か」
「はい。因みに日没時にも西の方角に金星は見えるんですけど、それは宵の明星と呼ばれています。両方同じ時期に見る事は出来なくて、一定期間を挟んで代わる代わる見えるんです」
「東の明けに西の宵……朝と夜……面白いな!」
同じ惑星でも時間帯によって呼び名が変わるのが不思議でもある。
「金星は杏寿郎さんと、とても縁があるんですよ」
「む?そうなのか……?」
はい……と頷いた七瀬は、俺左手をそっと繋いで、再び話を始めた。
五月十日。これは俺が生まれた日だ。
牡羊座から魚座。十二個ある星座の内、自分の誕生日は占星術で言う所の牡牛座。
各星座にはその星座を支配する惑星が割り振られており、俺の場合は今七瀬と共に見ている金星がその惑星との事だ。
「日の呼吸が十二個。その日の呼吸から派生した呼吸が五つ。更にそこから派生した呼吸が七つ。これら全部を合わせると丁度十二個になります。日の呼吸の技名は全て太陽を表す名称です」
「うむ、確かにそうだな」
「十二星座は黄道十二宮とも言われているんですけど……黄道って太陽の見かけ上の通り道なんです。だから十二個の星座全てを太陽が一年かけて巡っていきます」
ここで彼女が一呼吸置き、隣にいる俺を見上げた。
「もしかしたら占星術は呼吸に何かしら関係しているのかなあ?と思って、日々あれこれと分析しているんです」