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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第42章 霞が明けて、八雲は起きる



時透は三本目が始まると、自身が編み出した漆ノ型 —- 朧と言う技名だったか。それを素早く放ち、七瀬を倒してしまった。

炎の呼吸で言う”煉獄”と同じように奥義と言ってよい型で、変幻自在の歩法を駆使して、相手を翻弄するとの事!


二本こそ引き分けに持ち込んだ彼女だが、霞柱に負けてしまった。


「煉獄さん」

「どうした、時透」

自分の右隣に座っている霞柱が話しかけて来る。

「良いんですか? 七瀬の所に行かなくて」

「ああ! 今の俺に出来る事はない!」

「冷たいんですね、恋人なのに」

「時透、煉獄の言う通りだ」

え……?とふろふき大根を食べる手を止め、彼は宇髄の顔を見る。

「あいつが今一番会いたくねーのは煉獄だからな」

「…?そうなんですか?」

首を傾げる時透に宇髄は”お前も継子と恋愛すりゃあ、わかる”と肩に手をポンと置き、彼にその理由をつらつらと語り始めた。

…同じ呼吸を使う者同士と言うのは嬉しい事もあるが、そうではない事もある。こればかりは仕方ないな。

そこへ ——

「炎柱様、私行って来ますよ」

「ありがとう! では頼む」

俺に声を掛けて来たのは風柱邸専任の隠、長友くんだ。

彼は我が家専任の隠、内田くんと同期で仲が良い。それもあって今日ここに不死川と共に来てくれた。

長友くんは風柱邸専任に配属される前に、心に傷を負った隊士の話を聞く事を長くやっていた時期があった。

故に彼は七瀬の所へ行くと、申し出てくれたと言うわけだ。

話を聞くのが上手い長友くんに任せておけば大事ない。大事はないが、何故か七瀬の顔ばかりが浮かんで来る。

やめておけ。
先程も皆にはっきりと言ったではないか。今の俺に出来る事はないと。

しかし彼女の顔と交代するように、そのような思いが頭の中でぐるぐると回り続けている。

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