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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第42章 霞が明けて、八雲は起きる



「二本目、始め—— !」

父の声が再び庭に響く。今度は序盤から攻める七瀬だ。
本人も言っていたが、やはり一度相手に先制されねば本来の力が出にくい。

そんな性質なのだろうか。

「炎の呼吸・壱ノ型」
「—— 不知火!」

迷った時や気持ちを切り替えたい時は、基本に戻る。これは七瀬が常日頃から心掛けている事らしい。

足と腰が地面に近い位置まで落ち、右足で地を蹴って時透の間合いに入る。

横一閃の太刀だが、素早く正確な剣捌きで払われるが、それでも彼女は攻めていく。

カン、カン、カン——小気味よく響く木刀の音。

【仮想霞柱】と銘打ち、伊黒と鍛錬した事が効いているな!
技術の高い彼と打ち合う事により、危機察知の意識が上がっているように見受けられる。

時透が木刀を弾き、後ろに下がった。



「陸ノ型・月の霞消(つきのかしょう)」

霞柱は自身が放った霞に包まれて、再び姿を俺達の前から消した。



「炎の呼吸 ——」

「霞の呼吸 ——」

この視界の悪い状況でもどうやら二人は呼吸を互いに出し合っているらしい。霞に日頃から慣れている時透はともかく、七瀬はどのように戦っているのだろうか。

うーむ、全く予想がつかん!

「また二人が見えなくなったわ。しのぶちゃん、どうやって戦っているのかしら」

「時透くんの場合、ご自分の呼吸には当然馴染みがあるでしょうから、この状況だけを見ると彼に有利なのでは…としか思いつきませんね」

俺と同じ疑問を持った甘露寺が胡蝶に聞いている。

「目で見えぬならば、心の目。即ち心眼と言う手もある」

「悲鳴嶼さん、そりゃ目を閉じるって事か??」

「そうだ、宇髄。しかし、それは日頃から鍛錬している場合の話。付け焼き刃の心眼では時透の霞に太刀打ち出来るかどうか…」

「煉獄、そう言った鍛錬を今までした事はあるのか?」

「一度もないな!」

隣の冨岡の問いかけにはっきりと返答すると、彼だけではなく、宇髄も悲鳴嶼殿も静かになった。

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