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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第42章 霞が明けて、八雲は起きる



それから一時間程経ち、現在は午前十一時。

煉獄邸の庭の中央に七瀬と時透が向かい合って立つ。緊張している様子がこちらから見ても丸わかりだ。天才と称される事が多い時透が対戦相手故に、無理もないがな!

その七瀬はスウ……フウ……と細く長い息を一つする。

縁側には先程我が家に来た客が全員ズラリと並んでおり、各々が彼女と時透に激励の言葉をかけた。

「時透ー! さいしょっから手加減なしで派手派手の全開でいけよー!」

「七瀬ちゃーん、 頑張って…!」

「どうしてあいつがこの勝負を受けたものか…たかだか継子風情に」

「さあなぁ、気まぐれってヤツじゃねぇかぁ?」


「二人共、そろそろ良いか?」

父上が七瀬と時透に声をかける。

「はい」

「僕も問題ありません」

「一本につき、時間は十分。それを合計三本で、二本先制した方が勝利とする。休憩は五分ずつだ」

わかりました……と二人は互いに返事をした後、相手に向かって一礼をし、木刀を構える。

「それでは一本目、始め —— !」

父上の声で、とうとう時透との一騎打ちが始まった。



まずは相手を探ると言った所だ。真っ直ぐと七瀬をを見る霞柱の双眸は勝負が始まったと言うのに、全く変化がないように見える。

さて俺ならばどう攻めるか。そんな事を思案し始めると時透が動く。

「来ないの?—— なら、遠慮なく行くよ」

流れるような動作で動く霞柱は、風の呼吸の派生だと言う己の型を打った。

「霞の呼吸・弐ノ型 —— 八重霞(やえかすみ)」

体を大きく捻りながら、幾重にも重なった…八雲を彷彿させるような斬撃だ。七瀬はどう動く?

「炎の呼吸・捌ノ型 —— 烈火の舞雲」

彼女木刀からは炎の龍が放たれ、青天に向かって螺旋状に昇って行った。
この瞬間、八重霞と八雲 —— 雲霞(うんか)が混ざり合う。


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