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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第38章 父と息子の初炎武(えんぶ) 〜二人の炎柱〜



杏寿郎が幼く、槇寿郎が現役の炎柱だった頃。

「早く俺に追いつけ」とはっぱをかけると、自分と同じ双眸に小さくも確かに燃えている杏寿郎の灯火が、輝きを増すように大きくなった。

槇寿郎はその度に「こいつの親になれて良かった」と喜んだ。
稽古の度に水を得た魚の如く己が教えた事を吸収し、得た事を実際に稽古で発揮して来る杏寿郎。

小さな千寿郎が加わると、更に充実した時間となった。
縁側では自分達三人を穏やかに静かな笑みを携えて見守る瑠火の姿。


『あれから瑠火がいなくなり、自暴自棄になってしまった時期もあったが……』

「父上! 兄上! 頑張って下さい!!」

懸命に自分達二人に声をかける千寿郎の隣で、静かに観察する七瀬。

『息子の継子で恋人でもある七瀬さんを見て、この勝負をしたいと思った』

カンカン、カンカン、と得物が交わる乾いた音が相変わらずこの場で響いている。


経験値は槇寿郎が上ではあるが、刀を持たなかった時期が存在している為、体は全盛期に比べるとやや重い。

しかしそれでも。杏寿郎との手合わせは楽しいと、心と体がしっかり反応している。

すると杏寿郎は木刀を受け流し、一度後ろに下がると槇寿郎もまた後ろに下がった。

闘気が静かに足元からゆらりと昇り始めた二人は、ふうと一つ短い息をはく。


『ここから…激しくなるのかな。杏寿郎さんも槇寿郎さんも凄く落ち着いているけど』


二人を包む空気を読んだのか、二種類の蝉の鳴き声が一時やんだ。
静かな時間が短く訪れる。

瞬間 —— ガッと土を蹴る音がしたかと思うと、ゴウ!と炎が杏寿郎の木刀から現れた。

「弍ノ型・昇り炎天 —— 参ノ型・気炎万象!」

ぐるりと炎輪(えんりん)が槇寿郎に襲いかかり、間髪入れずに上段からも激しい炎が追撃する。

『杏寿郎さんが得意な連撃…!!』

七瀬の両手に今日一番の力が入った。

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