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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第38章 父と息子の初炎武(えんぶ) 〜二人の炎柱〜



「肆ノ型 —— 」

槇寿郎は防御にも使える【盛炎のうねり】を自身の前方へ放った。
炎が壁のように現れ、杏寿郎の連撃を防ぐ。


「陸ノ型・心炎突輪(しんえんとつりん)」

型と型がぶつかり合い、双方の炎が相殺される中、今度は槇寿郎が連続となる攻撃を放った。

七瀬が考案した突き技である。
一点集中とも言うべき陸ノ型は、槇寿郎が得意とする攻撃だ。速さもあるが、それよりも一撃が重い。


ガン ——! と木刀同士が激しく当たる音が響く中、杏寿郎は陸ノ型を後ろに受け流し、体勢を整えた。

『不知火の連撃だけではなく、陸ノ型まで…父上もだが、七瀬の執念も感じるな』

木刀に纏った炎が消えると腰を低く落とした後、ダンッと地を蹴った杏寿郎は父の間合いに再び飛び込んで行く。

放つ技は杏寿郎の得意とする壱ノ型だ。

「不知火!」

横一閃に流れる緋色の炎は、速く鋭い。
切先まで炎に包まれた木刀が槇寿郎の木刀に届く瞬間、下段から上段へ昇る炎輪(えんりん)が表出する。

「弍ノ型・昇り炎天 —— 参ノ型・気炎万象!」


息子の得意の型である壱ノ型をかわすと、先程杏寿郎がその後に見せた弍ノ型・参ノ型で攻める槇寿郎である。

受けた杏寿郎は父がここまで動けるのに驚いたが、それよりも自分に本気で向かってくる父を見る事が出来、万感の思いを味わっていた。


小さな千寿郎を交えて三人で稽古をしていた際、早く俺に追いつけと槇寿郎に度々声をかけられた杏寿郎は、その度に気持ちが奮い立たされた。


いつかきっと父のような炎柱になる。
いつかきっと父に追いついてみせる。

いつか……いつか必ず父と本気の勝負をする。


『母が亡くなり、父は変わってしまった。しかし、七瀬が父の心を明るくしてくれ…今こうして、本気で剣を交わしている』


「父上! 俺はあなたとこうして勝負出来ている事が、嬉しくてたまりません!!」

上段から木刀を振り下ろせば、力強い木刀が己の攻撃を受け流す。
父の木刀が横から薙いでくれば、己はそれを受け流す。


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