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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第37章 夏の小江戸へ君を連れて



自分の顔を七瀬にグッと近づけ、覗き込んでみる。うっと一瞬目が泳ぐ恋人は一体何と告げてくれるのか?

む? やや緊張しているような気がするな。頑張ってくれ! 七瀬!! すると ——


「四季の中で私は夏が一番好きなんです」
「ほう、それは嬉しいな」

口に出した以上に、じわっとあたたかな気持ちが胸に広がっていくのを感じる。これはつまりそういう事だ!
七瀬は先程【夏の太陽は俺だと思う】と口にした。


「夏は空が鮮やかで綺麗だなあって毎年思ってて。蝉の鳴き声も夏を感じれるし、甘味も夏ならではの物も出て来ますし、雨上がりの虹も綺麗だし…それに何と言っても、この空気感ですね。この時期が来ると、気分が物凄く高揚して。朝からとても良い気分で過ごせるんです」

「…そうか」

七瀬はあくまでも夏の好きな所をいくつか上げているだけだ。俺の事など全く言っていない。
しかし、何度も言うが、彼女は四季の中で夏が一番好きだと伝えてくれた。

それ故、俺自身を好いているのだと言って貰ったようで心が嬉しさで震えてしまったのだ。

「はい!そして、今日また一つ夏が好きな理由が増えました」
「……と言うと?」

もうこの時点で七瀬が次に何を言ってくれるのかわかってしまった。先程共に見た風鈴の事を伝えてくれるはずだ。
これは是非とも彼女の言葉が聞きたい!

せっかちな性分を必死で押さえつけ、その瞬間を待つ。

「縁結び風鈴をあなたと一緒に見に来れた。それが本当に幸せです。誘って下さってありがとうございました」


「………」
「杏寿郎さん?」
「………」

予想以上だった。

七瀬から貰う言葉はいつもどんな時でも嬉しい物だが、今の言葉はじわりじわりと心地よく響き、あたたかな温度となり、胸の中に広がっていったのだ。


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