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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第37章 夏の小江戸へ君を連れて



その大晦日の【時の鐘】の仔細はこうだ。

当日の日中に一般参加者向けの整理券を配布した後、深夜、時の鐘に持参し、整理券に記載してある先着番号順に撞く段取りになっているようだ。

毎回長蛇の列であっという間に配布終了という盛況ぶりとの事。
「参加してみたい」と言って来た七瀬。そうなのだな。であれば——



「この近くに宿を取って、鐘をついた後は氷川神社に初詣も良いのではないか?帰ったら、早速父上と千寿郎に話してみよう。宿泊すれば朝の鐘も聴けるぞ」

俺がこんな提案をした直後、パッと表情が華やぐ彼女である。しかし、それはすぐに鳴りを潜めてしまい、どうした物かと気になってしまう。


「でも杏寿郎さん、そうなると三十日から前泊しないといけない気がします。きっと三十一日の早朝…いえ、深夜から皆さん並ぶのでは」

「む、確かにあっと言う間に配布終了になると言っていたな。その予想は正しいかもしれん」

「柱は本当に多忙ですから、除夜の鐘をつきに来るのは鬼殺が続く限りは難しいかも…」


現実的な意見だな。自分で口にした事により、七瀬は更に気落ちしたようだ。ふう、とため息をついている。

俺が関係している事で悩む彼女は好ましいが、今回の悩みはやや種類が違うように見受けられる。

む? これならどうだろう!頭に閃いた考えを伝えてみるか。


「確かに除夜の鐘をつくのは難しいかもしれないが、音色を聴く事とその後の初詣はやりくりすれば都合がつくと俺は思うぞ!」

「え…そうですか??」

うつむいていた顔を俺に向けてくれる彼女は、そんな事が可能なのだろうかと思案している。

「それさえも忙しなくなるかもしれないが…まずは父上と千寿郎にやはり相談してみよう」

「はい、ありがとうございます…」

ようやく笑顔を見せてくれた七瀬だ。

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