第37章 夏の小江戸へ君を連れて
「ご馳走様でした。お食事も甘味もとっても美味しかったです」
食事が終わり、俺が全ての会計を済ませていると、七瀬が未菜子さんに礼を伝えている。
「仕込みをたくさんしておいて良かったよ。ダンナがね、今日は特に繁盛の予感がするって言ってたの。こういう予想が得意な人なんだけど、流石に驚いたよ!」
ここのご主人は根っからの商売人のようだ。素晴らしいな!
俺が注文した牛鍋定食とみたらし団子は、用意していた三分の二程の量がどうやら出てしまったらしい。
うーむ、またやってしまったか。
しかし、腹が減っては戦が出来ないしな。勘定が終わった所で未菜子さんが七瀬の紅が取れていると指摘した。
「お食事と甘味があまりにも美味しかったから、忘れてました。ありがとうございます。杏寿郎さん、お手洗いに行って来ます」
「承知した!」
やや早足で手洗い場に向かう七瀬だ。そんなに急ぐ事なのか?俺にはよくわからない。
未菜子さんと律子さん、だったな。
七瀬が二人に再度礼を伝え、俺が次回はと父上と千寿郎を連れて共に来訪すると伝えると、未菜子さんはとても嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた。
「みなさんとまた……こうして元気にお会い出来る事を楽しみにしています」
「煉獄さん、ご馳走さまでした。ありがとうございます…俺とカナヲの分まで」
「ご馳走さまでした」
「気にするな!こういう事は年長者の役目だ!」
店の前で七瀬、竈門少年、栗花落少女の三人が、俺に杏寿郎さんに頭を下げて来た。
四人分の食事代。
通常でもそれなりの金額になるが、自分が食した量を加えると、なかなかの支払い額だ。
柱の給金は自分が希望する金額だけ支給される故、上限はない。と言っても無駄に使う事もない。
ただしこう言った機会の際は、惜しまず使用する。
大切な恋人や後輩と楽しい時間を過ごせるのであれば、何の迷いもないからだ。