第37章 夏の小江戸へ君を連れて
少年は両目から大粒の涙を垂れ流し、体をひくひくさせながら泣いている。一体これは…どうしたのか。
うーむと疑問に思っていたところへ隣の七瀬が「感動したみたいですよ」と声がかかる。
「炭治郎、はいこれ」
少年の右隣にいる栗花落少女が大きめの手拭いを渡すと、礼を言った竈門少年はそれを使用して一度鼻を噛んだ。
彼の顔が上がると「そう言う所に本当に癒される。ありがとう」と七瀬が礼と共に竈門少年に伝える。
双眸はまだ赤いが、鼻水はどうやら落ち着いたようだ。
「少年! 少し落ち着いたか? であれば、みんなで食べよう!」
俺が両手を合わせ、食事を始めるよう促すと、礼を言った彼は注文した天ぷら定食をゆっくりと食べ始めていく。
彼がまず最初に口にしたのはタラの芽の天ぷらだ。
塩胡椒の小皿に漬けて、口に持っていき、パクリと一口食すと途端に笑顔が生まれた。
タラの芽の天ぷらは彼の好物なのだろうか。
横に座っている栗花落少女は、さつまいもの天ぷらを美味しそうに食べている。
控えめだが、笑顔が顔に浮かんでいるので好物なのだろうか。
「ご馳走さまでした!!」
四人全員の声が重なる中、他のお客が食べた物を詰まらせたり、お茶を吹き出しそうになったりと、混乱をしているようだ。
俺は声が人よりも大きいらしい。それ故このような事態になる事が総じて多い。
「甘味はどうする?あんみつとみたらし団子…それからカステラが絶品らしいぞ!」
カステラは七瀬の大好物だ。きっと口の中は唾液が溢れそうになっている事だろう。見ずとも俺にはわかる。
「じゃあせっかくなので…俺はみたらし団子に。カナヲは?」
「そうだね…私はあんみつにしようかな」
「七瀬はどうする?」
もちろん君はカステラを注文するのだろう?