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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第37章 夏の小江戸へ君を連れて



鳥居をくぐる際に一度止まって一礼をし、左足から踏み出す。
これは「進左退右(しんさたいう)」という作法だ。


中央は”神様が通る場所”とされている為、右側又は左側からくぐるのが通例とされているが、今日のように人が多く、混雑時…神様と正面から対峙する場合は、左足から進み右足から退くのが正しい作法との事である。

故にやむを得ず、中央を歩く際には左足から踏み出すと良いようだ。

次に手と口を清める為に手水舎(てみずや)へ。
手を洗い、備え付けられている柄杓で口を軽めに洗った後は、参拝の為に本殿へ向かう。

そこには木の良さを生かした”江戸彫(えどほり)”と呼ばれる関東特有の精緻な彫刻が全面に施されていた。

並んでいる人の波が少しずつ前に進み、やがて俺達の順番がやって来た。

七瀬は持っている巾着から、俺は信玄袋(=布製の手提げ袋)に入れている財布からそれぞれ小銭を一枚取り出し、賽銭箱に入れる。その後は一度姿勢を正し、深いお辞儀を二回。

パンパン、と胸の前で両手を二回打った後、手を合わせて心の中で祈る。

それが終わると本殿に向かい、深いお辞儀をして終了だ。
これが俗に言う”二礼二拍手一礼”である。

「では回廊に行ってみよう」
「はい」

彼女の左手を自分の右手で当たり前のように絡めると、心臓が心地よく跳ねるのがわかる。
七瀬と手を繋ぐ。ちょっとした事だが、毎回あたたかな気持ちを味わっている。



本殿から歩く事一分弱。
鳥居をくぐった時も見えていたが、江戸風鈴の回廊が向かって左側に飛び込んで来た。

「わあ〜綺麗!本当にたくさん風鈴がありますね…」
「うむ、これは見事な物だ!」

決められているかのように浴衣姿の人々が列をなし、回廊に入る順番を待っているようだ。

俺と七瀬もそれに倣い、列の一番後ろに並ぶ。



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