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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第37章 夏の小江戸へ君を連れて



中紅色は赤と言うより、桃色に近い色だ。
故に色合いに柔らかみを感じ、七瀬がもつ雰囲気をより一層穏やかな物に変化させている。

しかし気になる事が多いようで、前を見る視線はどこかうつろだ。

ふと手元を見ると指先が彩られている様子が目に入った。
どれ、よく見てみよう。
車道側を歩いている俺は、繋いでいる手と手をゆっくりと持ち上げた。

「む? これは緋色と青柳色か?」
「そうです…」

先日、俺は七瀬とこんな約束をした。今後は君の爪紅は自分が塗りたい、と。
今日はどうやら彼女が自分で塗ったようで、七瀬の爪にのっている色をこの時初めて見た。

左右共に親指、中指、小指には緋色が。人差し指と薬指には青柳色を塗られている。

「なるほど」

俺達の羽織の色か。
これには目が細まり、口元に笑みが浮かんでしまう。七瀬はたびたびこのような可愛らしい行動をする。

気分が高揚した俺は、彼女の左手と自分の右手をより一層強く絡めた。

「特別な一日になるなあって思ったから、この二色にしたんです」
「いつも色々考えてくれてありがとう」

「いえ、何色にしようか考えるのも楽しいので」
「そうか、しかし出来れば俺が塗りたかったな」

照れる七瀬を見たかったのだが。そんな加虐めいた思考をしていると、横から「また次回お願いします」と声が届いた。

「ああ、そうしよう」




川越駅から歩く事十五分。神社の外観が目の前に見えて来た。

「凄い人ですね! 皆さんやはり風鈴でしょうか」
「間違いないな」

境内がある敷地内は溢れ返る人達。家族連れも多いが、俺達と同じような男女 —— 恋人同士も多そうだ。

境内の入り口に大きくそびえ立つ朱色の大鳥居。
木製の鳥居としては日本一の大きさのようで、高さは約十五メートル。七瀬がそう教えてくれる。

「ほう!」

日本一か。凄いな!!


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