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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第37章 夏の小江戸へ君を連れて



ここで今日着用している自分達の服装について記そう。
まずは七瀬だ。

菱形が散りばめられた中紅花(なかくれない )の浴衣。
【なかくれない】とは、明るい薄みの紅色で、帯は装飾無しの水色。さてこの結び方は何と言うのだろう。

俺はさっぱりわからないので、こう言う時は本人に聞いてみるのが一番だ。早速問うてみると、どうやら【文庫結び】と言うらしい。
浴衣帯の基本的な結び方のようだ。

「基本は何でも大事でしょう?」とは本人の言い分である。確かにな!!


対し、俺はと言うと ——
普段一部分だけを結び、他をおろしている髪は頭の上で一つにまとめた。

今の季節はこうするとうなじに空気があたり、とても心地が良いと言う理由もあるが、彼女と二人で出かける時は必ずこの髪型にするようにしている。

「杏寿郎さんの一つ結び、私本当に好きです」

誰でもない、愛おしい七瀬がこう言ってくれるのだ。
やらないわけにはいかないだろう。

着ている浴衣は常盤色(ときわいろ)で、松や杉などの常緑樹の葉の色のように茶みを含んだ濃い緑色の事だ。
これは俺の誕生日の前日、父と弟と出かけた際、反物屋に寄って注文した。

父から「浴衣は一式持っておけ」と助言された為だ。
腰に巻いている角帯(かくおび)は黒の格子柄(こうしがら)で、浴衣と帯共に落ち着いた色あいの物である。

弟は「俺達は髪色が目立つので、釣り合いが大事ですよね」と言っていたが……なるほど。こう言う事なのだな!!

実は七瀬の浴衣も、自分の浴衣を注文した時に仕立てた物だ。本人に伝えたのは昨日である。

「継子になって一年の節目」
「階級が上がった祝い」


七瀬があまりにも遠慮するので、そんな理由を二つ程伝えるとようやく納得して受け取ってくれたのだ。


「よく似合っている」

出かける前に何度も俺は七瀬の浴衣姿を褒めた。
しかし赤系統の衣服を着る事が少ないようで、まだ少しだけ落ち着かない様子である。


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