第34章 八雲心炎、燃ゆる立つ
『よし、龍でいこう』
「捌ノ型・烈火の舞雲!!」
七瀬は先程初めて放った炎の龍を再度出した。
〈虎に対するは龍〉
そんな考えが頭に浮かんだ為、捌ノ型で応戦する。しかし、これだけでは心許ない。
念押しとして、先程放つか迷ったこの型を出す。
「伍ノ型・改 —— 炎虎・番(つがい)!!」
炎の龍に炎の虎。
二頭……いや、三頭の斬撃を、杏寿郎が放った〈炎虎〉に真正面からぶつけた。
すると ——- 少しずつ彼が放った炎の虎の威力が緩やかになっていくではないか。
七瀬はその様子を見て、少しだけ安堵していた。
しかし、継子を再び焦らすのはやはり師範である。
カン —— !!
『…と!本当にいつの間にか間合いに入って来るんだもんね』
『……やはり予測は上手いな』
そのまま打ち合って行く二人だ。
『はあ、キツイな…』
「どうした? 七瀬、もう終いか?」
『ん……そんな事ない!』
「まだまだやれますよ!」
七瀬は己を鼓舞する言葉を発した後、何とか残っていた余力を使用し、杏寿郎の木刀を弾くと後ろに飛びのいた。
『そろそろ十分経つな……さてどの型を使ってくる?』
「壱ノ型・不知火!」
七瀬が放ったのは、炎の呼吸の基本の型だ。
『なるほど、最後も基本に戻るのか。では俺は—— 』
「捌ノ型 」
『え…そんな、もう?? 嘘でしょう?』
杏寿郎が放とうとしている型は、何と……!
「烈火の舞雲」
七瀬が驚きで両目を見開く中、杏寿郎は先程初めて継子が自分に見せた捌ノ型を放ったのである。
「———— !!」
そして、槇寿郎の声が煉獄邸の庭に響き渡った。