第34章 八雲心炎、燃ゆる立つ
「三本目始め——!」
七瀬は闘気を可能な限り高めた後、呼吸を整える。スウ、ハアと短いが、しっかりとした物だ。
そして、左右に一閃する不知火の連撃を放つ。
「壱ノ型・改 —— 不知火・連」
「肆ノ型・盛炎のうねり」
対して杏寿郎は渦巻く炎を放ち、壱ノ型の改を吸収すると次の動作に入った。わずか二歩の助走だけで地を蹴り、弓を引くような構えを見せる。
「陸ノ型・心炎突輪!」
右手に持った木刀から、紅蓮を纏った炎の突きが七瀬の眼前に迫るが ——
『速さと威力が初めて見た時より上がってる…!凄いな』
「水の呼吸 ・参ノ型 —— 流流舞い!」
僅かな期間で精度と速度を上げた杏寿郎に対し、感心する七瀬だ。
しかし、それは一瞬の事であり、彼女は呼吸を炎から水に変え、彼の突きを翻すと連続攻撃を仕掛けた。
「速さはまだまだだな」
「んっ…」
カンカン、と重く速い太刀が瞬時にやって来る。
続けて打ち込まれる木刀を受けては流して行くが、いかんせんギリギリの対応である。
『一旦…はじいて……うわっ…』
上段から素早く振り下ろされる一打を何とか受け流し、彼女は後ろに飛んだ。
『ここだな』
杏寿郎は次の一手の頃合いを見定めると、木刀を右斜め後ろに振りかぶる動作をする。
その型とは ——
『…炎虎だ…!』
「伍ノ型!!」
目の前から放たれるのは七瀬の予想通りの大きく紅い虎。前回対戦した時と同じように、再び自分に向かって来たのである。
『虎……虎には……』