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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第34章 八雲心炎、燃ゆる立つ



女子である七瀬の放つ炎の呼吸。
これには炎のような熱さもあるが、優しさと温かみが混ざっている雰囲気も杏寿郎には感じられる。

対して男の自分…これは父もそうではなかったか?と彼は記憶している。熱さと剛健。そして猛々しさ…と言う表現がしっくりくるのではないか、と。

「杏寿郎」

ちょうど先代の炎柱の事を考えていた杏寿郎は、槇寿郎本人から名前を呼ばれる。
はい、と返事をすれば竹筒に入った水を渡された。礼を言った杏寿郎はやや乾いている喉に、それをゴクリゴクリと流し込む。


「楽しそうだな。これは七瀬さんにも言える事だが」
「はい、こんなに楽しい勝負は久しぶりです」

槇寿郎は腕を組み、ニヤリと笑いながら杏寿郎に話しかけた。
息子の返答を受け、やはりか……と納得した元・炎柱は千寿郎と談笑している七瀬に目線を移す。



「七瀬さんも兄上もとっても楽しそうに勝負されていますね!」
「……そう見える?」
「はい!」

白日(はくじつ)を思わせる、癒しの笑顔の千寿郎。そんな彼を見た七瀬は顔を綻ばせた。

彼女がちらりと杏寿郎を見てみると、槇寿郎と談笑している彼が見えた。

『炎柱に楽しいと思ってもらえている。こんなに光栄な事はないな』

七瀬は二本目に向けて、再度気合いを入れ直していく。

『杏寿郎さんは不知火も炎虎もまだ打って来ていない。得意であろう型を打たない、と言う事は余力を充分に残しているんだろうな』

先程配分を考えながら動いていると言った。

しかしこの発言の半分は彼女のハッタリだ。
最初の数分で七瀬の試合運びまで察する杏寿郎のの洞察力。これには毎度の事ながら、目を見張ってしまう。

彼女は紺色の道着の紐を今一度キュッと結び直した。


「二本目……あの踏み込みには気をつけないと」

七瀬が決意したその時、槇寿郎から声がかかる。

「次、行くぞ。互いに準備はいいか?」


———— 最初から炎の呼吸で勝負だ! この七瀬の想像は現実となる。


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