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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第34章 八雲心炎、燃ゆる立つ




『この一瞬で見極める判断力…本当に凄いな』

自分の斬撃をまたも止められた七瀬だが、怯む事なく彼に向かう。

カン ——
杏寿郎の木刀に一回自分の木刀を当て、そこから小気味良い動きで彼に太刀を打ち込んで行った。

「七瀬! 随分と飛ばしているような気がするが、大事ないのか?」

「ご心配ありがとうございます!……でも、きちんと配分を考えながら動いていますよ……!」

一度杏寿郎の木刀を払って後ろに下がった七瀬は、息を短く吸って整え、左掌を彼に向けながら走り出す。

「陸ノ型」

右手に持っている木刀の周囲が半分程炎に包まれ、その上から炎が重なり、二重の炎になる。

次の瞬間 —— 彼女は右足で地を蹴った。

「 —— 心炎突輪!(しんえんとつりん)」

先端から繰り出された炎の斬撃は槍のように細長くなり、空気と混ざった突きが杏寿郎を襲う。

彼は思う。
いつも恋人として甘えて来る七瀬は間違いなく、普通の女子だ。そしてかわいらしく、愛おしい。

しかし、今目の前にいる七瀬は炎柱の継子であり、同じ呼吸を使う剣士だ。自分を本気で倒そうと考えている一人の隊士である。

九ヶ前より確実に力をつけたし、新しい型を編み出したと言う自信もあるのだろう。しかし、師匠である彼もまた研鑽を積んで来た。

『では俺もこの型を出すとしよう』

一度だけしか見た事はない。
しかし、自主稽古で何回か試し打ちをした事があった。故に杏寿郎の頭の中でそれを放つ表象(ひょうしょう=イメージ)は出来ている。


「漆ノ型 」

彼が反時計周りに、体の前で円を描くように太刀を回すと、その太刀の動きを追うように、炎の円輪が出現する。


「紅蓮業火!(ぐれんごうか)」

突き出された炎輪(えんりん)が、七瀬の放った陸ノ型に真っ直ぐと進んでいった。
二つの型がぶつかる間際に、杏寿郎が放った炎輪がグッと縮んで、陸ノ型と混ざり合う。

それは相殺の状態になり、フッと消え去った。


「十分経ったぞ! 一本目は引き分けだ」

その時 —— 審判である槇寿郎の声が響いた。


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