第31章 青柳色の君からの贈り物 〜さつまいもの甘味と共に〜
「お店に出るようになって、たくさんの方がお相手にお花を渡す姿を見て来ましたけど……このやりとりは初めて見ました。お二人共、ありがとうございます!」
この生花店は恋仲になりたい男女、又は既に恋仲になっている男女が花を相手に贈ると成功したり、更に深い仲になれると評判の店だ。
「あ……そうなんだ……」
花を渡すのは先程七瀬が言ったように男性側から。女性側から、と言うのはどうやら今回が初めてらしい。
段々と顔が赤くなっていく恋人。そんな様子を見た俺は、小さく笑ってしまう。
「お二人いつまでも仲良く〜。またお立ち寄りくださいね!」
久住少女は両手を降りながら、俺達二人を見送ってくれたのだった。
「やはり君は飽きないな…」
「んー…恥ずかしいですよ……」
熱くなった頬を七瀬は手で仰いでいる。
花屋から少し離れた所で、昨日父と弟が自分にやってくれた事を思い出した。
「君とこの後行きたい所がある。付き合ってくれ」
「あ、はい」
スターチスを左手に持ちかえ、右手を彼女の左手に絡める。そのまま歩いていると、横からほうっと息が聞こえた。何かあったのだろうか。
七瀬を見てみると ———
「ん?」
「いえ、花束が似合う男性って良いなあって思っていました」
「そうか?」
「はい!」
他愛もない話をしながらで歩いていると、目的の場所に着いた。
「ここって……」
目の前の店の看板には「窪田写真館」昨日彼女も同行する予定だった写真館だ。
「七瀬…君と二人で写真を撮りたい」
「え……」