第31章 青柳色の君からの贈り物 〜さつまいもの甘味と共に〜
「千寿郎がたまに花を購入して飾っているだろう? あれもここで買っている物だぞ」
「確かにそうですね。えー同じ花屋さんだとは思いませんでした。何でそんな話題にならなかったんだろう…」
全くだ。
今日の今日まで何故この話にならなかったのか……まるでこの時を待っていたかのようだな。
「お待たせしました。はい、どうぞ」
「ありがとう」
七瀬は久住少女から、掌に収まるぐらいの花束を受け取ると、俺の目の前に立つ。
「杏寿郎さん。三つ目…いえ、四つ目の贈り物です。改めてお誕生日おめでとうございます」
「………これを俺に?」
「はい、そうです。受け取って頂けますか?」
自分に差し出されている小さく愛らしい…まるで七瀬を思わせる花束は黄色のスターチスだった。
「花言葉は”愛の喜び” そして”誠実” です。大好きなあなたにはいつも真っ直ぐな自分でいたいから、このお花にしました」
どうぞ……と続けて彼女が紡いだ言葉を受け止めた俺は、花束を清々しい気持ちで受け取った。
「ありがとう。花束を貰うのは初めてだが、とても嬉しい」
「男性から女性に花束を渡すのは一般的だと思うんです。でも私は…」
「ん……?」
背伸びをした七瀬が、俺の耳元に唇を寄せる。トクン、と心地よく心臓が跳ねた。
「自分からあなたに思いを伝えました。だから女性から渡すのも良いかなって……」
「確かにそうだ。君からだった」
彼女の唇がゆっくり離れていく。
本音はもう少しこのままでいたかったのだが。残念に思いつつも、七瀬の頭を労わるように撫でた。
恋人とのそんなやりとりが終わると、すぐ横でパチパチ…と拍手が聞こえた。
何と! 久住少女が満面の笑みで自分達を見ているではないか!