第31章 青柳色の君からの贈り物 〜さつまいもの甘味と共に〜
「いや、今回は全くわからん」
「あ、それはちょっと嬉しいです」
七瀬が絡んでいる手を繋ぎ直す。ふんふん、と鼻歌を歌い出した彼女。かなり機嫌が良くなっている。
そのまま歩いていると、恋人の目当てらしいお店が見えて来た。
む? ここは……!!
「ここです」
「……花屋か?」
「はい、お花屋さんです」
着いた先の看板には「久住生花店」と書いてある。俺がいつも桐谷くんの墓参りに行く際、立ち寄る花屋だ。
店先には色とりどり、鮮やかな花達が咲き誇っており、目に入れるだけで心がほっとしていく。
「七瀬さん、いらっしゃいませ。今日はどのお花に…あ、こんにちは、煉獄さん」
「こんにちは!今日も綺麗な花ばかりだな」
「ありがとうございます!」
店の中から空色の着物に前掛けをつけた少女が出て来た。この店の看板娘…久住(くずみ)少女である。
「こんにちは、果耶ちゃん。今日はね…」
彼女の耳元に口を寄せ、俺に聞こえぬよう話す二人だ。七瀬もここを利用しているとは…。
「はい、わかりました。七瀬さん…」
何を了承したのだろうか。久住少女は店の奥に入ってしまう。横にいる七瀬を見ると、耳がやや赤い。
恥ずかしがる事、なのか??
「君達は仲が良いのだな!」
「はい。巧のお墓参りの時にいつもここでお花を買っているので…。あ、もしかして杏寿郎さんもでしたか?」
「ああ、母上がここの花をよく買って来て、家に飾っていたんだ。だから桐谷くんの墓参りに行く時はこの店で買っている」
思い出した。
以前俺を桐谷くんに紹介する目的で、彼の墓参りに共に行った時は、ここが休業日だったのだ。