第31章 青柳色の君からの贈り物 〜さつまいもの甘味と共に〜
「父上、そこまで伝えなくても……!」
「杏寿郎、真理子さんは俺やお前と違って色恋に大変聡い方でな。前もって伝えておいた方が良いと判断した。どちらにしろ、いずれわかる事だ」
「槇寿郎さん、そんな脅かすような事を言わなくても大丈夫ですよー」
にっこりと柔和な笑顔を向けてくれた奥方 —— 真理子さんはやや垂れている双眸が彼女の人柄を表しているかのようだ。
「でも杏寿郎さんが選ぶお方に間違いはないと言うのは、はっきりとわかります。 合ってますか?」
「はい!! 奥方の仰る通りです!! 彼女は大変に愛らしく……」
「おい、もうそれ以上言わなくて良いぞ」
俺が七瀬の事を続けて話そうとすると、父に止められてしまった。何か問題があったのだろうか?
「兄上は本当に七瀬さんの事が好きなんですね」
「ああ、無論だ!!」
「ふふ、私も早くお会いしたいわ」
恋人の事を奥方にもっと話しておきたかったが、ここで克さんに呼ばれてしまったので話は中断した。
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「はい、皆さん凄く良い顔です!! お疲れ様でした」
「年齢が違う三つ子のようねぇ。皆さん本当によく似ているわ」
バシャ、パシャ、と複数回写真機なる物の音が響き、俺達三人の撮影は無事に終わった。
中央に置いた椅子に自分が座り、右後ろに父が、左後ろに弟がいる構図……と克さんは言っていたような。
他にも、父上と千寿郎が中央に座った写真も一枚ずつ写した。
克さんが俺一人の写真も撮りたいと言った為、合計で四枚だ。
七瀬もいれば、ここに座っていたのだろう。
“真ん中ですか? 私が座って良いんですか?”
これは先程千寿郎も言った事だが、同じ事をきっと彼女も発していたかもしれない。
「杏寿郎さん、撮影の時も良いお顔をされてましたが、今も凄く良いお顔ですねぇ」
「……そうでしょうか?」
「ええ、とっても」