第5章 君は継子で、俺は師範
俺は手紙を彼女に返しながら、そんな事を問いかける。
「うーん。確かに簡単に負ける事はなくなったかもしれませんね…」
「七瀬さんは本当によく頑張っていらっしゃいますもん。俺は凄いなあといつも思ってます!」
「千寿郎くん……」
弟がきちんと彼女の事を見ている。何故だろう、とても嬉しかった。じんわりとその胸に浮かんだ思いを味わっていた所へ門扉から賑やかな声が飛び込んで来る。
「いっちばーん!おい!紋逸、三太郎!俺の圧勝だったな!わっはははー!」
「はあ、伊之助は速いな……!」
「ちょっと七瀬ちゃん!何美味しそうなもの、食べてんの??」
猪頭少年・竈門少年・我妻少年が走り込みから帰って来た。
週に一度は合同稽古だ!と称し、ひと月前から共に鍛錬をしている。
彼らは沢渡の一期下の隊士だ。
通う手間を省く為、我が家に越して来ないか?と問いかけた時、一緒に暮らしている後輩がいると聞き、俺は興味がわいた。
詳しく聞いてみた所、三者三様の性格・呼吸の適性に皆違いがあり、率直に育成したいと感じた。
それぞれ任務がある故、なかなか全員が揃うとは限らない。
だから合同稽古と言っても都合が合う時に限るのだが、俺が任務で留守の時も沢渡は三人とよく自主稽古をやっているらしい。
少年達と継子は鬼殺隊士専用の長屋に住んでいる。
元は桐谷くんと沢渡が二人で暮らしていた所へ、任務帰りの彼らが押しかけたのだとか。
「お疲れさま!いっぱいあるから、これから一緒に食べようよ」
継子が焼き芋を全部食べ終え、彼らに駆け寄ろうとしたその時。
俺は四人に向けてこんな提案をした。
「よし!全員揃ったな。ではこれから二人一組に分かれて手合わせ!それが終わったら一人ずつ、俺と地稽古だ!」
「ええっ?」
「うおっ?」
「……はいっ!」
今にも泣き出しそうな我妻少年・被り物で確認出来ないが、恐らく双眸が輝いたであろう猪頭少年。そして再度やる気を見せる竈門少年だ。
うむ、感心感心!