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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第27章 よもやのわらび餅



七瀬は両手から右手に日輪刀を持ち変えると、弓を引っ張る要領で後ろに引いた。
それは弓道の所作を思わせる。一方の左手は掌を正面にし、真っ直ぐと伸びている。

彼女の刀身の茜色が先端から少しずつ炎に包まれていった。半分まで刀が炎を纏った所で、一度ピタッと止まる。


「陸ノ型」

刀身が更に炎で包まれる。二重の炎か……!
心炎突輪(しんえんとつりん)と名付けられた呼吸は、俺が先程七瀬に聞いたようにやはり突き技であった。

刺突の動きをした刀は、先端から放たれた炎の斬撃が槍のように細長くなり、そのまま空気と混ざったのちに残像を残す。


「………まだまだ改良しないといけないと思いますが、基本的な形はこう言った物ですね」


納刀をした彼女は横に並んでいる俺達三人に顔を向けて話しかけた。しかし、その問いかけに応える者はいない。

彼女の刺突に驚いたと同時に、何か新しい扉が開いたような……そんな高揚感をしばらく味わっていたかったと言うのも理由になるのかもしれない。


「……………」
「……………」
「……………」
「あの、皆さんどうされたんですか?」


この誰も言葉を発しない状況が心配になったのか、彼女が大層戸惑った表情を浮かべる。そこへ ———


「七瀬さん!」
「ど、どうしたの?」
「凄いです!ごめんなさい、それしか思いつく言葉がありません!」


やや大きめの声を出しながら、彼女に駆け寄りながら話しかける弟は珍しく興奮気味だ。輝く白日(はくじつ)の双眸に、俺だけではなく七瀬にもフッと笑顔が浮かぶ。


「それならよかった……」
「はい!」


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