第27章 よもやのわらび餅
「ごちそうさまでした」
居間に俺達四人の声が響く。
さて、一体彼女は何故あのような事をしていたのか。そんな疑問を問いかけようとした瞬間、父の声がその場を包んだ。
「七瀬さん、何か言いたい事があるのか?」
「ああ、俺もそう思っていた」
柱を退いて時間が立つ父上だが、そんな事を微塵も感じさせない観察力だ。それが無性に嬉しかった。
「すみません、俺も……」
「え??そうなの?」
よもや、千寿郎も気づいていたか。
隊士にはまだなれていないが、幼い頃より剣術に親しんで来た故か。これにも心が綻んだ。
「こちらからも聞きたい。俺だけではなく、息子二人がわらび餅を食べる様子を観察していた。何故だ?」
父 —— 元炎柱が真っ直ぐと燃える日輪の瞳で彼女を見据えると、見えない圧力を少し感じる。こんな表情を見れる事になるとは……よもや考えもしなかったな。
「……実は新しい型を思いついたんです」
「む…」
「ほう」
「え……凄いです」
俺、父上、千寿郎はほぼ同時に言葉を発し、互いに顔を見回した。
突き技か? —— 彼女に問いかけると、そうだと言う。
「なるほど、だから俺達を観察していたと言うわけか」
父が七瀬の返答を受け、納得の表情を見せる。
自ら思いついた型とは言え、炎の呼吸を代々使用して来た者の多くは煉獄家の人間だ。
故に炎柱を務めた経験がある父上や、現在炎柱の俺。千寿郎は鬼殺に関わっていないが、剣術は学んでいる。
自分達が取得出来るのかどうか。それを見極めていたのだろう。
「皆さん、食べにくいわらび餅を難なく口に運んでいました。だから使いこなせるのではないかと考えています」
「あの……技名は決まっているのですか?」
「はい……」
千寿郎の問いかけに、技名は決まっているのだと言う七瀬。
そこまで思いついているとは…。自分だけではなく、父や弟からも驚きの声が発せられた。