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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第25章 緋(あけ)と茜、初めての喧嘩




三日前。
俺は任務が早く終わり、自室で本部に出す見回り報告書をしたためていた。

その時、ガラガラ……と玄関扉が開く。
どうやら七瀬が帰宅したようだ。よし、迎えに行こう。
逸る気持ちを引き連れ、玄関に向かう。

着くと、脱刀をし、上り框(あがりかまち)に腰掛けている恋人がいた。心なしか背中が寂しそうな気がするな。


「おかえり、七瀬。怪我はないか? 今日もよく頑張ったな」

いつも通り、彼女の頭に手を乗せてみるのだが……。

「………」

言葉を発しない恋人に異変を感じ「どうした?何かあったのか?」と顔を覗き込んだ。


「沙希と何を話していたんですか?」

「ん? さき?」

さき、とは。
記憶にない名前が登場し、思わず首を傾げてしまう。さき、さき、さき………その後も脳内でその名前を反芻した。


「藍沢沙希ですよ。今日見回りで一緒だったんですよね?」

「ああ……」

顔と名前が一致した。先程七瀬の贈り物の件で質問をした女子の事であった。

彼女から言われた物を藍沢少女と別れた後に、早速購入しに向かったのだ。遅くまで小間物屋が開いていた為、大変に助かった件である。


「特に大した事は話してないぞ。しいて言えば、彼女に聞きたい事があったから聞いたまでだな」

「………」

「それがどうかしたのか?」

……?何故……何も話してくれないのだ?


「七瀬? 具合でも悪いのか?」

「すみません、湯浴みして来ます」

彼女は俺の質問には答えず、そのまま自分の横を通り過ぎようとした。瞬間もやっとした気持ちが胸中を支配した為、恋人の右手をパシッと掴んだ。


「言いたい事があるなら、はっきり言ってくれ」

なるべく冷静に言葉を発したつもりだが、気持ちとは裏腹に強い口調で言ってしまった。




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