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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第25章 緋(あけ)と茜、初めての喧嘩



ある日の事だ。

時間はまだそんなに夜もふけきっていない頃合いの中、俺は警備地区の見回りで一緒になった女性隊士にある話を持ちかけていた。
彼女は七瀬のニ期下の後輩隊士だと言う。


「七瀬さんに、ですか?そうですね……」


女性隊士 —— 確か藍沢少女と言ったな! 彼女が小さな顎に右拳を当て、うーんと考えている。
日頃継子として奮闘している恋人に贈り物がしたい。昨晩急に思い立った考えだ。

とは言え、俺は女子が好む物はさっぱりわからない。それ故洒落た見た目のこの少女に問いかけている所だ。


肩より少し長い髪の上半分は団子結びにして、萌黄色の玉簪を挿している。真っ直ぐと切り揃えられた前髪は艶々。
先日の七瀬と同じく指先は爪紅が乗せられており、色は桜色だ。


「ああ、君は何が欲しい?教えてくれ」

「え?私ですか?」


この何気ない言葉のやりとりをよもや七瀬に見られていたとは……。











それより三日後の早朝、俺と七瀬は普段通り稽古をし、滞りなく終えた。


「今日もありがとうございました」

「ああ、お疲れさま」

互いに礼をし、七瀬が俺へ駆け寄って来るが ——


「あの……杏寿郎さん……」

「すまない。書類の整理をこれからしないといけない。またにしてくれ」


俺は彼女の顔を見ないで、木刀をしまう。師範として接する事は何でもない。これは七瀬と恋仲になる前からそう接して来たからだ。

しかし恋人として接するとなると、七瀬に普段通り応対する事が大層難しく、どう行動して良いかもわからない。

そのまま家の中に入ると、呼び止められた時の恋人の声色が脳内に反芻する。

稽古以外、全く口を聞いていない状態が続いていて今日で三日目だ。

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