第4章 茜の炎が芽吹く時
彼女の日輪刀を見た瞬間 —— 驚きの声が出た。よもや、よもやこんな事が起ころうとは!
「…茜色の刀身ですか」
「うん、そうなんだよ。七瀬の刀が三日前に突然色変わりしたようでね。原因は調査中だからまだわからないのだけど……ごめんね、元の色に戻す事は出来るかな?」
お館様が続けて沢渡少女に促すと彼女は返事をし、意識を集中させていく。
「全集中———」
グッと掌に力を入れる様が見て取れた。すると、スゥ……と刀は元々の空色に変化していったのだ。
「………お館様、これは一体?」
信じられない。本当に現実に起きている事なのか??
それからお館様は彼女が今の状態で水の呼吸を使用する際、体にかかる負荷が一・五倍〜二倍の感覚になっていると言う事を俺に説明してくださった。
最後に納刀を促された沢渡少女は日輪刀を鞘に閉まい、自分の隣に再び膝をついて傅く(かしずく)。
「杏寿郎、七瀬を君の継子にしてあげてくれないかな?」
「え?」 「む?」
俺達二人の声が同時に重なった。彼女が自分の継子……?
「赤い刀身になったと言う事は、きっと七瀬に炎の呼吸の適正が備わったのではないかと。私はそう思うんだよ」
うむ、これは納得だ。しかし……彼女は水の呼吸の使用者と聞いている。炎の呼吸とは対照的な呼吸だ。
「君達二人は面識がもうあるんだよね?なんだかとても気が合いそうな雰囲気だけど……どうなのかな?」
気が合う、か。
お館様は俺達二人を優しい笑顔で見つめている。穏やかだが、こちらの心情をはっきりと捉える眼差しだ。
今は殆ど見えていないそうだが、その双眸の奥からは信じられない程の情熱をひしひしと感じる。
「合うか合わないかと問われれば、合うと言えましょう」