第21章 可愛い君、かわいいあなた ✳︎✳︎
「男として不甲斐なし!穴が入ったら入りたい思いなのに、可愛いはないだろう?」
「いえ、ああなる前に早く伝えなかった私も悪いので。ごめんなさい。でも……」
「ん?どうした」
おでこに当てられる大きな手。安心してしまう体温がそこに伝わって来た。
「いつも男らしい杏寿郎さんが私は大好きですけど、かわいい杏寿郎さんはもっと……好きですよ?」
「……!!」
彼は珍しく顔を赤くして、口元に手を当てる。あ! 照れてる……!
「君は時々、心臓に悪い事を言うな……」
「私はいつもあなたにそう言う事を言われていますけど…」
「む……そうか?」
「そうですよ」
ささやかなお返しと言うか何と言うか。いつも翻弄されているので、ごくごくたまに杏寿郎さんが困る姿をこうしてみれるのはちょっと嬉しい。
「もう起きて大事ないのか?」
「はい…昼食の用意、お手伝いしてきます」
しばらく横になっていたら、大分体が楽になった。
台所に向かおうと布団から出ようとすると、彼がギュッと後ろから抱きしめてくる。
「まだ君と二人でいたい」
「杏寿郎さん、それは嬉しいのですが……お腹空いてません?」
「うむ。思い切り空いている。お預けは辛いのだが……」
「お預け……?」
お預けとは?
あ!さっきのあれの事か!いやでも、私もお腹すいてるしなあ。うーん。困った。あ、これならどうだろう?
「あの、お芋もふかして来ますから行かせて下さい」
「む……そうか」
私がそう言うと、彼は名残惜しそうにしつつも腕を外してくれた。やっぱりさつまいもの効果はすごいな。
「美味しいの、作ってきますね」
「ああ、楽しみに待っている」
恋人にちゅっ……と一つ、唇への口付けを贈って台所に向かった。