第21章 可愛い君、かわいいあなた ✳︎✳︎
「もう…大丈夫だ。気持ち良かった」
「良かったです、ん……」
逞しくしっかりとした男根に触れていた自分の手を彼がゆっくりと外す。続けて私の両頬が大きな手で包まれ、再度啄む口付けが始まる。
彼の首に自然と回すのは、自分の両腕だ。
「七瀬との口付けは、んっ…本当にたまらないな。全く、飽きない」
啄む口付けがひと段落すれば、次は舌を絡め合う口付け。
自分も飽きないし、気持ちいいし、何より……
「私も杏寿郎さんと口付けするの、大好きです……よ?」
この一言なんだけど……あれ、なんか視界がぐるぐる回る…??
「七瀬??」
杏寿郎さんの声がだんだんと遠くなる。——— 私はそのままのぼせてしまった。
★
「んっ……」
「気がついたか? 」
「よし、では俺は冷たい茶を持って来よう。おい、手が止まってるぞ! しっかり仰いでやれ」
この声、杏寿郎さんと槇寿郎さん……?
意識を取り戻すと私は自室に寝ていた。右横を見てみれば、丁度槇寿郎さんが部屋から出ていく所で、視線をずらすと心配そうに自分を覗き込む恋人の顔が見えた。
「私、あの後どうなったんですか?」
「俺が君の体を拭いて衣服を着せた後、父と千寿郎がここまで運んでくれたのだ」
「そっかあ。お手間かけてしまいましたね」
「七瀬、すまん……」
「大丈夫ですよ」
布団に寝ている私の傍で団扇をパタパタと仰ぎながら謝る杏寿郎さん。いつもピン!と吊り上がっている眉毛がたれ下がっていて、その様子がとてもかわいい。
ふふっと私が笑えば「また可愛いと思っている顔だな」と彼が私のおでこを人差し指で優しくトン、と押す。