第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
「と、言うわけ」
「へぇ……」
七瀬が善逸に一通り話し終えた所で、後ろから知っている声が聞こえて来た。
「炎柱様! 皆さん! お怪我はございませんかー?」
隠の内田だ。
彼が数人の仲間と一緒に現れ、皆(みな)がいる所へと小走りで向かって来る。
「怪我は全員かすり傷がほとんどだが、念のため一度確認してもらえるか? 必要ならこの場で出来る処置をお願いしたい」
「かしこまりました。では確認してみますね……あれ? 所でこのかわいい女の子はどなたですか?」
内田が禰󠄀豆子をおやと見つめ、頭巾の間から覗く大きな瞳を輝かせた。彼は禰󠄀豆子に会うのは、これが初めてだ。
「ちょっと内田さん! 禰󠄀豆子ちゃんはダメです! 俺がいます! 」
さっきまで足が震えていたはずの善逸は、凄い勢いで禰󠄀豆子と内田の間に両腕を広げながら入り込む。
好いた女子を取られてたまるか!……と、必死である。
「残念! まあ確かにこれだけ可愛ければ恋人もいるよね〜」
「こ、ここここ恋人なんて、そんなあ〜。禰󠄀豆子ちゃん、照れるね! 」
「ムーン、ムーン」
先程と同じようにくねくねする善逸と、ニコニコ笑顔の禰󠄀豆子。
七瀬は三人の様子を見て笑顔がこぼれ、気持ちも和んだ。
『あれ? そう言えば伊之助は………』
彼女は周りを見回すと、猪頭の彼は社殿の目の前で仁王立ちしている。
「伊之助! どうしたの? 」
何かあったのか —— 心配になった炎の継子は後ろから声をかけ、駆け寄ってみるが……。
「いや……なんかここ、気になってよ」
「ん? そうなの? 」
伊之助が瓦屋根を見ているのに倣い、彼女も同じ場所へと視線をやる。